社会福祉法人 ユートピアの会 理事長 鶴飼寿栄 |
期待される施設へ
「うちの子に余計な期待を掛けないで下さい。そのままの方がみんなに迷惑を掛けないので」と慌てて懇願する母親の言葉が衝撃的だった。トラブルを起こさず長く施設に居られる環境を守りたいと思う本心の表れでもあったと思う。
積み木を積み上げ頼りが無い安定感ではあるが、そこでバランスが保たれている。そこにもう一つ積み上げる事で全部崩れてしまうのではと思う恐怖心に例えられる。しかし、今の安定感がそのまま続く保証はどこにも無い事も事実だ。
施設機能はその様な見守り的な部分もあるだろう。しかし毎日の利用者との関わりから普通の人と変わらないところを発見する事が多々あり、「この人に必要なものは、あと何だろう」と考えてしまう。「ほんの少し何かをプラスしたら、この人はきっと今よりもっと伸びる」そんな確信めいた事を考えたら何もしないわけにはいかない。
限られた言葉でしか表現出来ない彼らの『本当』はどうして知る事が出来るのか。彼らの心に入り込み、『本当』を引き出したいと考え、色彩を使った取り組みが出来るよう、スタッフが色彩福祉士の資格取得に挑戦している。又、動物の持つ特有のセラピー効果によって利用者の精神安定と成長が期待される事からまきばの運営にも力を入れている。
少しの可能性から多くのものを引き出し、成長に繋げ、その先にある自立と就職に導きたい。
まさしく、『人を活かし、人で生きる。』それが本当のユートピアとして。