山姥がいつものように髪を振り乱し朝ごはんの支度に必死こいてるその時。
突然「山姥!」と背後から声がし「ギャ!」と驚きの声を上げ振り向くと
「昨日の夜、電気付けだっきゃバリッバリッて音゛したんだよ」とT田さんの真っ黒に日焼けした顔がありました。
「電池が切れだのがなって思ってこれの電池とっかえだんどもそんでねぇがった」
と居間のライトのリモコンを持ってます。
リモコンの電池とは関係ないのは明白です。
「電池じゃなくて蛍光灯が切れたんじゃないの?」
「なんも、キレでねぇ。二つともついでら」
「今はついてんの?」
「つぐんども、つければそうなるんだよ」
「だから、キレそうなんだよ」
「いや、キレでねぇ!ちょっと来てみで」
このクソッ忙しい時に緊急事態でもないのにこの場を離れるわけにゃいかんのです。
その時、山姥のいたずら心がムクムクと頭をもたげ
―出たんじゃないのぉ、明日からお盆だし―と、喉元まで出かかりましたが
見かけによらず気の小さい、ァじゃなくて繊細な(便利な言葉じゃ)T田さん
夜眠れなくなったら大変です。
「蛍光灯見たの?」
「見だってば、ついでら、キレでないって」
「カバー外して見たの?」
キョトン顔で???
「カバー外して蛍光灯見てごらん、切れるときは黒くなってるから」
「黒ぐなってれば切れるのが?」
おうおう、そういうこってす。
やがて黒ずんだ輪っかライトを持ってT田さん再びの登場
ほれみろ、年寄りの言うことは聞くもんだ。
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