喪服に身をつつみ、出かけ前庭に目をやると静かに細かい雪が空から真っ直ぐ降りて松の木の葉に受けとめられている。白と緑のコントラストの中で、何かが足りない、何だろう?と、花だ。きっと花だろうと迫る時間にテーブルにある花瓶から花を取り出し妻に包装して貰いながら、まだ何かを探している。そうだポッキーの分だ、愛犬が好んで食べるナッツをポケットに入れた。
簡素なお別れ儀式は想像通りでさっきの庭のコントラストを疑う様に無色にも近く、包みから出した花がお棺の上で光を放ち仏様の安堵感なのか周りの張りつめた空気が変わったみたいだった。これポッキーの好きなお別れのヤツとポケットから取り出し、お棺に入れてあげてと手渡した彼の表情は経験した事の無い現実の悲しみとの闘いにも見える。障害を抱え支え合いながら暮らした親子の姿の想像には「砂の器」が蘇った。時の言うヤングケアラーだったのかも知れないと。
黒い車に吸い込まれて行くお棺に再び手を合わせ見送る。誰かが助けなけばならない私達の使命は善意を超え命とのお付き合いかも知れないと降りそそぐ細雪の中で又自分を探すのである。
合掌
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