早朝の小雨にいささか気おくれしながらも友人の一日遅れの命日に手にした白い花を届ける義務感が足を急がせる。
そんな心を見透かしてか道中の春の花々が小雨に濡れ鮮やかな色彩を放している。彼の墓地は小高い丘から少し下った所にある、一日遅れは既に私の花を挿す場所は失せているだろうと丘の上からその墓標を覗きこむが予期していた供養の花は見当たらず小雨に濡れ黒びかりしている石は近づくにつれ、もう、誰も待ってないよと言わんばかりである。
石に刻まれた文字、静けき川の岸辺に、と詠っている。ダンディーなその句に彼らしさを認とめ苦笑いしながら持って来た花を供えた。ジャーナリズムに長けた法律家で自称、番町の玉三郎と気取っているが街の旦那様達の駆け込み寺でもあった。恩師であり友人でもあったその人の影響は私の人生を大きく変えた事である。その彼の痕跡がユートピアの運営の随所に生きている。
帰り道、春雨や濡れて行こうと言う詩を思い出しながらその詩の心模様を想像しながら溢れて来るさまざまな五月雨の詩に自分の生き方を重ね合わせて見たが、果たして・・
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