それは5月の連休が終わった頃でした。
長男がいきなり
「今年の誕生日、交通費をプレゼントしてほしい。」
と言い出しました。
なに?市営バスに乗って友達と遠出するの?と聞いたら

「一人で弘前に行ってくる。」

デブ症でヒッキーの代名詞のような長男からの衝撃的な一言。
最近は、陛下のお言葉とかスマップの解散とかいろいろ騒がしいですが、
これほど衝撃的な言葉は正直ありませんでした。

家族で出かけるときも車の後席で横になり、道を覚えるでもなく
風景を見るでもなく、ただ連れて行ってもらうだけの彼が、
勉強するのに図書館に行くにしても、市営バスの乗り方すら
知らない彼が、JRを駆使し青森駅乗り換えで青森県の西海岸
弘前市に訪問するとは、なんという青天の霹靂。

驚きを隠しつつ平静を装いながら、それならば経路の設定と
時刻と料金の確認しておかなければね、と旅の準備をそれとなく
教えた。
そう、たとえそれが実施できなくても、取り組む姿勢、調べることの
大切さを理解できれば良いと思いました。
まぁ、今の時代ネットをちょっと使えれば、経路は自動的に表示され
時刻表も料金も、昇降する駅の何番線、何号車に乗れば最適かすら
表示されます。そこにたどり着くこと、見る事、知ることも重要です。
旅の経路と料金はほどなく定まりました。

とはいえ、夜中は3時4時まで勉強の名を借りたテレビ三昧、
当然朝は起きられないという現実に、時間厳守の原則が守られることは
到底かなわないと思っていました。
ところが当日、さすがに自ら起床することはできませんでしたが、一言目で
床を離れることに成功しました。
やればできるじゃん!

当日、駅のホームまで随伴し見送りました。
のび太の誕生日、夏休みの真っ最中、家族旅行の方々や、
それこそ初めての一人旅をする子供と、それを見送る親も。
いつもは許されない携帯を持たせ、精いっぱいの注意を伝え、
指定席に座る所を確認して送り出しました。
見えなくなると襲ってくる不安の数々。それらは忘れることでやり過ごしました。

残された人々は諸々の用事を済ませ、予定をこなした後、宵の口、合流に向かいます。
ちょっと前までは八戸は終点であり始発でありましたが、今は違います。
自家用車のように眠っていれば、気が付いた時は函館か東京という事もあり得ます。
一抹の不安を抱きながら、祈るように改札前で待ち受けました。
すると、いつもの赤いTシャツが見えてきました。
こちらを見つけると、彼も安堵したのか満面の笑み。
旅の終わりと新たな一歩を確実にした一瞬でした。

連れて行ってもらうだけの人が、自ら思考し行動した初めての出来事。
彼の成長を確実なものにしたのでした。

で、その旅のなか、見ず知らずの人から助けられたこと、
というか、日本はまだまだ安全だなぁ、と思った出来事については次の機会に。

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